無価値感とは 「頑張らない自分には価値がない」という感情

心理学用語の解説

私達の心の中にある大きな観念の1つに『愛されるためには何かを頑張らなくてはいけない』というものがあります。
そのままでの自分では価値がない、受け入れられない。
そのような観念(強い思い込み)を「無価値感」といいます。


無価値観がもたらす困りごと

無価値観が強いというのは、「自分はそのままでは価値がない」と強く思い込んでいる状態です。
ですから、価値ある自分になるために頑張らなくては!という思いもまた、強くなるんですね。

そうすると、自分を追い込んで無理をしたり頑張りすぎることにも繋がります。
ハードワークがやめられない、恋愛で必要以上に相手に尽くしすぎる、というようなことです。

もちろん仕事を頑張るのもパートナーに優しくするのも、行動としては素晴らしいことです。
ですが、それが自分の喜びとしてではなく「無価値観を埋めるため」だとしたら。

何もしないと価値がないから頑張るというのは切ないですし、そのような気持ちからの行動は、どれだけやっても心が満たされません。

というのも、何もしない自分に価値がないと思っている以上、周りからどんな感謝や評価をもらってもそれは「無理をしている自分に対しての感謝や評価」に感じてしまい、自分の本質そのものを認められている感覚を得られないんですね。

ですから、自分自身に対して「このくらいの頑張りで十分ですよ」という許可が出せずに、どんどん追い込んで頑張ってしまう、でもその割にリターンが少ないと感じてしまう(喜びとして感じられないから)、ということも起きたりします。

無価値感はなぜ生まれるのか

一般的に、無価値感が作られる原因には、私たちの子ども時代の経験が影響しているといわれています。

私たちは赤ちゃんの頃、何もしなくても存在するだけ・泣くだけ・笑うだけで周りを笑顔にさせることができました。
けれど躾が始まってくると、今までと同じようにはいかなくなってしまうのですね。

静かにいい子にした時、お手伝いをした時、親の言うことを聞けた時に褒められるということが増えてきます。
そうすると、愛情が欲しければ我慢して「いい子」にしなければいけない…と思うようになります。

そして思春期の頃にも、勉強や部活動など何かを頑張った時や成果を出したときに周りに褒められたり注目されるようになり、頑張ってすごいことをしなければ認められない、という気持ちが強化されたりもします。

大人になって仕事や恋愛で人と関わる時にも、子どもの頃に作られた「受け入れてもらうためには何かしなければいけない」という思いは、感覚や観念として残っていることも多いのです。

無価値感を減らす・手放すには?

私たちに色々な困りごとをもたらす無価値感という感情。
これを減らす・手放すためにどのようなことができるのでしょうか。

まず大切なことは、無価値感という感情に気づくということです。
観念というのはとっても強い思い込みなので、さもそれが真実のように感じてしまいがちです。

「何もしない、頑張らない自分には価値がない」
このことを真実だと捉えるか、それとも無価値感という感情のせいなんだと捉えるか。
捉え方が変わるだけでも、自分を追い詰めたり辛く感じる気持ちが薄れることも多いのです。

また、日常で感じる無価値感をセルフモニタリングしてみてもよいかと思います。
見つかった時にはぜひ「自分はそんなに頑張らなくても大丈夫じゃないかな」など、優しい言葉をかけてみてあげてくださいね。

さらに踏み込んで無価値感を癒す場合には、カウンセリングもおすすめです。
お話をお伺いしたうえで、「周りの愛を受け取る許可を出す」「無価値感の原因となった過去の誤解を解く」など、あなたに合った効果的な心理療法もご提供しています。

無価値感を癒した先にあるもの

無価値感が強いと苦しい理由は、自分を追い込んで頑張りすぎてしまうこと・周りの評価を喜びとして受け取れないこと。
そして何より、そのままの自分を自分自身が認められていない、ということです。
そのような感情を持ち続けるのは、かなりしんどい生き方といえるのではないでしょうか。

“ほどほど”を自分に許し、周りの評価や愛をシンプルに受け取り、自然で楽な自分にOKを出すこと

無価値感を癒すことで、そんな毎日を送れるとしたら。
それは幸せに生きるために価値のあることなのかと思います。