「補償行為」の根っこは恐れ
補償行為とは、罪悪感や劣等感・不足感を別の成果や行動で補おうとする行為のことをいいます。
例えば、
・良い人でいないと嫌われると思い、無理なことでも引き受けてしまう
・家庭がうまくいかない時、嫌な気分を埋めるためにハードワークをしてしまう
・子どもに時間を使えないという負い目から、高価なものを買い与えすぎてしまう
・素の自分に自信が持てないために、つい偉そうに振る舞ってしまう
など、ネガティブ感情を埋め合わせるためにするさまざまな行動です。
誰しもネガティブな感情は感じたくありませんから、その感情を直視しないために補償行為をするのです。
罪悪感についてはこちら↓の記事で詳しく解説しています
罪悪感とは -幸せを遠ざけてしまう感情
ここで大切なのは、ある行動だけを見て「これは補償行為です」といえるような行動はないということです。
行動だけを見れば一見問題のない、むしろ良いことのように見える行動でも、何かを埋め合わせなければ…という気持ちからする場合は補償行為となります。
また補償行為の根っこには恐れがあるため、頑張って一度は成果を出したとしても心はまた次の恐れを見つけてきます。
どこまで頑張っても終わりがなく心が満たされることもない、ということが補償行為の苦しさなのです。
補償行為の見分け方
では、今の自分の行動が果たして補償行為なのかは、どのように見分ければよいのでしょうか。
1番わかりやすい見分け方は、「その行動で自分が本当に良い気分になれているか」ということです。
人は、恐れからの行動には嫌な気分が付き纏い、愛や喜びからの行動をするときには良い気分でいられます。
例えば「家族に手料理を作る」という行動。
やらされているような嫌な気分になるとしたら、「本当は作りたくないけど、役立たずになりたくない」という気持ちから補償行為になっているのかもしれません。
または「料理くらいまともに作れない自分なんてダメすぎる」と料理をしない自分を強く責めているのかもしれません。
同じ行動でも「これが大好きな家族の栄養になるんだ」とか「美味しいご飯を作って喜んでもらうのが嬉しい」と感じられるときは、心に愛を感じて良い気分でいられるのではないでしょうか。
これは「補償行為をやめて楽しく料理すれば良い」ということではありません。
補償行為をしてしまう時、必ずそこには理由や事情があります。
ですから「楽しまなきゃダメだ」と言い聞かせるのではなく「どうして楽しくないのだろう?どうしたら楽しめそうかな?」と自分に聞いてあげることで、見えてくる気持ちがあるはずです。
補償行為を手放すには
補償行為をしているときは良い気分になれない。
それならば、できるだけ手放せる方が毎日を良い気分で過ごせますね。
補償行為を手放すための方法のいくつかをご紹介します。
愛からの行動を増やしてみる
補償行為を減らすためには「愛や喜びからの行動を増やす」という方法があります。
そもそも私たちが誰かのために何かをするとき、最初は相手を思い遣っていたり、純粋に役に立ちたいと感じていることも多いのではないでしょうか。
それがいつの間にか義務や当たり前になり、負担に感じているけど今更変えられない…そんなことも多いかもしれません。
そんなときにはもう一度、始めはどんな気持ちで取り組んでいたのか? という自分の初心に立ち戻ることで、もとの愛からの行動に戻れることもあります。
また、そのような感情の変容が難しいときには「どんなことなら愛からできるか、どのくらい負担を減らせば楽しくできるのか」などを検討し、行動を変えたり環境を変える方が良い場合もあります。
たとえば、会社の中核として活躍することを望んで入社したけど、どいつの間にか期待外れの業務に追われ、迷惑にならないためにこなしている…という場合。
「初心に返ってもう一度仕事への愛を持って取り組んでみる」という選択肢もあれば「愛を持って働ける会社に移る」という選択肢もあるということです。
どのような選択肢を選ぶにしても「自分は愛からの行動をしたい!」と望む意欲を感じながら進むことが大切かな、と感じます。
自分の不足感情に向き合って癒す
今の補償行為が劣等感などの強い不足感情を見ないためだとしたら、自分の自信のなさに向き合う勇気が必要かもしれません。
たとえば「自分は我慢しないと愛されない」という思いから過度に“良い人”をやめられない場合。
なぜそう思うようになったのか?という原因を探して心の誤解を解いたり、我慢しなくても愛されるという事実が心の深い部分で腹落ちすることで、補償行為を緩める許可を出せるようになります。
また「本当の自分を知られたら馬鹿にされる」などの劣等感から必要以上に自分を大きく見せてしまい対人関係が拗れるときは、その劣等感について深く理解して本来の自分の素晴らしさを見つけて癒す、ということが有効かもしれません。
どんなに強い不足感情も、あくまで思い込みであって真実ではありません。
けれど心が「自分は不足しているんだ」と誤解してしまうような苦しいことがあった、ということは事実です。
このような強い不足感情に向き合う作業は1人では難しいことも多いかもしれません。できれば、カウンセラーと一緒に取り組んでいただければと思います。
最後に:補償行為の全てが悪いわけではない
小さな補償行為は多くの人が日常的にしていることで、大人が人と関わるなかでゼロにすることは難しいと個人的には感じます。
補償行為が全てダメなのではなく、心には補償行為をする仕組みがあること、今の自分の行動は愛や喜びなのか、何かの埋め合わせや恐れからなのか、それを理解できるだけでも心は楽になります。
補償行為という概念を知っているだけでも、わけのわからない苦しさは整理されるのではないでしょうか。
補償行為は確かに、頑張っても満たされないことが多く幸せに繋がりにくい行動です。
ですが、その全てが悪いということはできません。
なぜなら補償行為は、自分の心を守る防衛機制の一つでもあるのです。
誰しも「自分は〇〇がダメだから△△で頑張ろう」とか「これは無理だから別のことで埋め合わせをしよう」と思うことってあるかと思います。
埋め合わせでバランスをとることは、心の負荷を減らすスキルのひとつです。
また、大切な人が本当に望むことができないときに別のことで補おうとするのは悪いことではありません。
それは愛のような補償行為だったり、補償行為のような愛だったりして、その境界は曖昧です。
ですから補償行為のすべてを悪いと捉えることは、自分自身を窮屈にすることでもあるんです。
どうか補償行為をしてしまうご自身へのダメ出しはしないでくださいね。
人は少なからず補償行為をする、それが自分の人生にとってマイナスだったり苦しさに繋がるときは対処すればいい。
そんなふうに捉えて、この概念を役立てていただけたら…と思います。
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