「夫婦の問題は、他人に話しても意味がない」?

夫婦のための心理学

「夫婦の問題なんだから、他人に話しても意味ないでしょ」
「2人の問題なんだから、2人で話し合って越えるべき」
これは私が長らく思っていたことでした。

しかし今でもそう思っているかとえいえば、答えは「NO」なのです。
なぜなら「夫婦問題に2人だけで向き合うと、よけいに拗れることもある」ということがわかったからなんですね。

「夫婦の問題は他人に話しても意味がない」という心理の解説

「夫婦問題を他人に話しても意味がない」と考える人は、普段から「他人に頼らない」という価値観をお持ちのことが多かったりします。
これは心理的に「自立」を呼ばれる考え方で、この価値観が強いと夫婦の関係性も同様に考えやすいのです。

また「自分がパートナーのことを一番理解している」という思いもあるかもしれません。
この思いは愛があるからこそなのですが、「自分のことは自分が一番わかっている」という価値観をパートナーとの関係性に重ねていることもあり、これも自立的な考え方の1つなんですね。

それから「夫婦の問題を人に話すのは恥を晒すようで抵抗がある」そんな考えを持つ方もいらっしゃるかもしれません。
そのような方は、日頃から「こんなことを言ったら恥ずかしい、ダメなやつと思われるかも…」と思いやすいのではないでしょうか。

この「完璧な自分でないと認められない」という思いは、そもそも自分は良いものではないからせめて完璧でなくては、という感情が元になっています。
そして、やはり自分の中に問題を抱え込むという自立的な行動になります。

つまり、もともと自立的な人ほど夫婦関係でも同じように自立的な解決方法を求めやすい、ということがいえるかと思います。
「夫婦のことは夫婦で解決するのが筋」という考え方は、「自分のことは自分で」という自立の価値観を夫婦関係に重ねた考え方なのです。

夫婦問題に向き合うときに気をつけたいこと

夫婦の問題を2人で向き合うことが悪いのかというと、もちろんそんなことはありません。
2人の間で解決できるなら問題はないのです。

ただ、当事者だけでうまくいかない時に2人で向き合うことにこだわると、問題がかえって悪化することもあります。
なぜなら「夫婦」という距離の近い関係性ならではの感情があり、それが拗れの原因になるからです。

「親密感」が作る依存感情

夫婦はお互いに「親密感」という感情で繋がっています。
親密感とは人との心の距離を縮めて絆を作るために必要な、大切な感情です。

ですが、この親密感は「依存」を生みやすいという面もあるのです。

「夫婦なんだから、それくらいやって当たり前でしょ」
「夫なんだから、もっとちゃんとわかってよ」
「妻なのに何で助けてくれないの」

こういう不満って、実は相手に対する期待が大きい状態で依存の1つなんですね。
そして、この依存に気づかないまま2人で問題に向き合うと、問題を拗らせることも少なくないのです。

私たちは、関係性の遠い他人にはそれほど期待はしません。
なぜなら「してくれなくて当たり前」って思っているからですね。
ですが親密感が生まれることで遠慮がなくなり「してくれない、わかってくれない」そんな不満が生まれやすくなることもあるのです。
(けっして親密感が悪いということではありません。)

そしてお互いに「これくらいわかるでしょ!?」という依存からの言い分をぶつけ合うと、話し合いがヒートアップして心の溝を深めてしまうことも。

このような場合は、どちらかが「色々求めてしまうのは夫婦ゆえの期待なんだ」と気付くことで、一歩引いた冷静なやり取りができるようになり、問題の解決に繋がりやすくなります。

問題に向き合うより、心のケアが必要なときもある

夫が・妻が大好きだからこそ、しっかり向き合いたい、
深い話し合いができてこそのパートナーじゃないか!
情熱的で相手への思いが強い人ほど、そのように感じるかもしれません。

しかし、自分の心の状態をかえりみず真剣に向き合おうとすることで、問題が拗れることもあるのです。
夫婦問題のストレスで心が傷ついたり疲弊すると感情を制御する力が弱くなります。
これは、体や脳が疲れている時に判断力が低くなることと同じです。

心が弱っている時には、普段では気にならないような相手の言動にも傷ついたり怒りが湧いたり、感情の振れ幅が大きくなりやすいのです。
そのような心理状態で相手に向かっていったら、どうなるでしょうか。
まして、相手の心も同じく疲弊していたら。

お互いにお互いの言動に反応して傷ついて、怒って、応戦して…。
問題解決どころか泥沼になる可能性もあるのです。

ですから、心が疲れているときにはまずは回復を優先してほしいなと思います。
心に負荷のかかる真剣な話し合いを少しお休みして、心を休ませるのです。

消化不良でモヤモヤするかもしれませんが、体が弱っているときに負荷のかかる行動は避けるように、自分自身の心をケアしてから、しっかりと問題に向き合う方が効率的なことも多いのです。

心のケアがうまくいかない時は、ぜひカウンセリングも使ってみてくださいね。

夫婦問題を他人に話すことには、意味があった

最初にお話した通り私は長い間、夫婦問題を他人に話しても意味がないって思っていました。
けれど実はそれは「自分のやり方・価値観が絶対的に正しい」という、めちゃめちゃ頑固な態度でもあったんですね。

そしてさらに、私の「問題に向き合う」という姿勢は、ときに夫にとっては「私の価値観を押し付けられてる」と感じることでもあったそうです。
私の心の中の問題を「あなたのせいだから、一緒に考えるべきでしょ」と夫の同意は関係なく2人の問題にしていたのです。

2人で問題を抱えている限りは私はこのことに気づけませんし、私のやり方を続けていたら今の夫婦関係はとても悪くなっていたかもしれません。

夫婦でも、お互いの体の不調は自分で何とかしようとはせず、専門家を頼りますよね。
ですがこれが心になると、「自分たちだけで解決できるはず」と思う方も多いのではないでしょうか。(もちろん、この考えが悪いというわけではありません)

ですが体も心も実は同じことで、どんなに愛があっても、知識や余裕がなくて相手の感情すべてを受け止められないこともあります。
それは愛情がない、というわけではないんですね。

心の距離が近いほど、色々な感情が絡まって拗れやすくなります。
ですからうまくいかない時には、知識や経験のある第三者の視点を入れことが有効なんですね。
また、問題を安全な場所で話すということには心の緊張を緩める心理的な効果もあります。

今、色々な感情がもつれて夫婦関係がうまくいっていない。

そのような方に、この記事がお役に立てましたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました^^